文献要旨

文献1:

「遠隔日本語学習コースウェアの設計条件―システム・エンジニアのためのコースウェア開発に向けて―」
高橋亜希子・才田いずみ・小河原義朗・井口寧(2009)

 本研究は、システム・エンジニア(以下SE)を対象とした完全な遠隔で有効に機能する日本語学習コースウェア設計条件を明確するために、開発研究を行った。研究方法は、まずコースウェアを構成するために、現場で実際に会話したデータを分析し、そのデータに基づき、言語使用現場や語彙・表現などを抽出し、コースウェアに反映させ最終的にコースウェアを基本会話とユニットモジュールの3つにより構成した。次に、この構成に基づき3つの課を開発・実施し、結果を観察した。その3つの課の結果から、必要とされる設計条件は以下のようである。@学習意欲を保つために多様なアプリケーションを提供し飽きずに学べる様工夫が必要、A丁寧できめ細かい支援策を組み込むことが必要、B教師対学習者や学習者同士の相互インタラクションがより生じるようにさらなる工夫が必要、であると考えられる。

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文献2:

「電子メールで使用される顔文字から解釈される感情の種類に関する分析」
加藤尚吾・加藤由樹・小林まゆ・柳沢昌義(2007)

 本研究では、電子メールにおける顔文字の機能である、感情を相手に伝える役割に注目した調査を行った。本調査では、顔文字を被験者に提示し、それぞれの顔文字から解釈される感情を尋ねた。そして、調査で得られたデータを用いて、それぞれの顔文字から解釈される感情の種類の数をカウントし、感情解釈の種類の多い顔文字と、感情解釈の種類の少ない顔文字の差異について、検討を行った。結果として、ポジティブ感情を表す顔文字の方が、ネガティブ感情を表す顔文字に比べてより感情解釈の種類が少ないことを示された。それは、ポジティブ感情を表す顔文字の方が、感情的な誤解やすれ違いを生じにくい可能性のあることが示唆された。しかし、書き手の感情状態を表す役割として顔文字を捉えると、顔文字には、感情解釈の幅の広いものと限定的なものがあり、注意を要することも分かった。

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文献3:

「受信者が感じている感情が送信者の顔文字使用に与える影響」
荒川歩・竹原卓真・鈴木直人(2006)

 本研究では、受信者が感じている感情について以下のことを検討した。@携帯メールに顔文字を添付した時の相反、A顔文字の種類、B送信者のメッセージと顔文字の種類の関係。研究方法としては、大学生42人の被験者に様々な感情状態(喜び、悲しみ、不安、怒り)を抱きながら架空の友達へ携帯メールを送ってもらう。結果として、受信者が不安を感じる時に顔文字を使うことが示唆された。そして、受信者が不安を感じている時には顔文字が用いられやすい傾向がある。これは、顔文字が単に送信者の感情表出にとどまらず、受信者を安心させようという積極的な意図を含んで使用されたことを示している。

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文献4:

「携帯メールコミュニケーションにおける顔文字の機能に関する分析 :
相手との親しさの程度による影響の検討」
加藤尚吾・加藤由樹・島峯ゆり・柳沢昌義(2008)

 本稿では、携帯メールコミュニケーションにおける顔文字の機能について、コミュニケーションの相手との親しさの程度による影響を調べるため、女子大学生を被験者にした実験を行った。結果から、親しい間柄に対して送信した携帯メールで顔文字を使用する場合、顔文字以外の文字数が減る傾向が示された。また、相手に謝罪する場面で親しい間柄に送信した携帯メールでは、親しくない間柄に比べて、言葉で表された謝罪が有意に少なく、顔文字が謝罪の言葉に代替される傾向が示唆された。更に、親しい間柄に送信した携帯メールでは、親しくない間柄に比べてより多くの種類の顔文字を使う傾向が見られた。

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文献5:

「顔文字が表す感情と強調に関するデータベース」
川上正浩(2008)

 本研究では、顔文字自体が表す感情強調を調べることにより顔文字のデータベースを作成することを目的とする。顔文字が有する文脈依存性を鑑み、"それぞれの感情をどの程度表しているか"という観点から顔文字が表す感情についてのデータベースを作成した。またこれに加えて、当該顔文字が"どの程度文章を強調するか"という強調度についてもデータベース化した。 調査対象として31個の顔文字が選択された。調査参加者には,喜び・哀しさ・怒り・楽しさ・焦り・驚きのそれぞれの感情ごとに1(全く表れていない)から5(とてもよく表れている)までの5段階で,強調度については1(全く強調されない)から5(とても強調される)までの5段階で各顔文字に対する評定を行うことが求められた。本調査の結果は、顔文字を対象とした心理学的調査を行う際の顔文字が表す感情に関する評価を提供する基準となる。

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